楽器の名前

Drakskipの新譜、「鼓動する足/Thrill of Being」
今回は久々に5弦ヴィオラを使ってレコーディングをすることになりました。
このヴィオラは僕が初めて手に入れた北欧の楽器で、作者は2年前に急逝したPer Klinga(以下Per)です。
北欧には変わった弦楽器がたくさんあって、最初の一本を決めるのに目移りしっぱなしの数年でしたが
Väsenのヴィオラ奏者Mikael所有の5弦ヴィオラを来日時に触らせてもらった時に、
大きい楽器の割に手に馴染んだ感じがして、決心してオーダーのメールを書きました。
購入の経緯は長くなるので置いといて、
今回のアルバム制作の中で「楽器の名前」について発見したことを書いておこう思います。

Per Klinga アトリエで(2015)

Perは今時の職人さんには珍しく、自分の楽器に名前を付ける人でした。
僕の楽器のラベルには、Perのサインで「Airone」と書いてあります。
それをつい最近まで英語の、Air – One だと思っていました。
今回のアルバムのクレジットに楽器名を書こうと思った時に、あれ?ラベルを見るとAironeとひと続きだぞ、と疑惑が持ち上がりました。
それで、他の人の楽器の名前を調べてみると、
先述のMikaelのヴィオラはPoiana=ノスリ
ネットで見つけたGallo Cedrone=雷鳥
どちらもイタリア語です。
どうやら僕の楽器もひと単語、Aironeで「アイローネ」と読むのだということがわかりました。
意味はアオサギ。
Perはヴィオラには鳥の名前をつけていたのです。

彼の楽器を有名にしたのはMicaelの5弦ヴィオラだと思うのですが、一番売れたモデルは5弦フィドル「violino」
そちらも調べてみると、
Solistizio Fiore=夏至の花
Biancospino=サンザシ
Viola del Pensiero=パンジー
などなど、花の名前で統一されています。

こうやって楽器の名前を並べると、楽器の持ち主の性格が思い浮かぶような名前をつけているのでは、と思いました。
Mia Marin所有のSolistizio Fioreなんか、まさにそうだと思う。(Miaは留学中によくお世話になったのでよくわかる)
一つ一つ思い入れを込めて、時間かけて、必要以上に凝って作っちゃう、っていう人だったのではないかなあ。
反対のタイプとして、豪快に、サクッと早く、すごい楽器を作る人もいる。どちらも良いのです。
ユーモアがあって、いつももてなしてくれて、ちょっと不器用で神経質なところが職人ぽいPer。
楽器の名前には、彼の想いが詰まっているのだろう。

ドレクの北欧ツアーの時も、留学中も、何度も会って何度もFikaしたのに、
何故かPerにAironeの意味を聞きもしなかった。
何を想って、遠い日本からオーダーした僕の楽器に「Airone」とつけたのか…

今回のレコーディングで、改めて彼の楽器の作りの良さを感じました。
ありがとう、ペール。

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